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およそ5年近く前まで、外資系の音楽レーベルで仕事をしていた私は、毎年5月にミュンヘンとウィーンで、この会社が主催するイベントを心待ちにしていました。世界中の支社にいる仕事仲間と再会できることが喜びのひとつでしたが、何よりこの季節、柔らかな光が照らしだす新緑の輝きの中で、シュパーゲル (Spargel)をお腹いっぱい食べられる至福こそが、仕事の原動力となっていました。
ネット上には、さまざまなレシピが紹介されていますが、私はなんといっても茹でたシュパーゲルにオランデーズソースという王道を好みます。
一昨年の6月下旬、この味を求めてウィーンとミュンヘンを訪ねたところ、すでにシーズンは終わった後で、どこにもシュパーゲルの姿はありませんでした。何か、厳格な決まりでもあるかもように、どこの店でも「もう、旬の時期は過ぎた」というコメントばかり。冷凍技術の進化と運送手段の多様化によって、いつでも、どこでも、なんでも食べることができる私たちにとって、旬の時期は過ぎたから、また来年をお楽しみに……という言葉は、なんだかとても新鮮に響きました。
写真はウィーンの郊外で出会ったシュパーゲル。プレートに乗せられた食材のアレンジメントが素晴らしい一品です。
(BRAVO Café 店長)