――浦和の夜の「企画会議」、その結果生まれたのが福田進一さん初の書き下ろし書籍「6弦上のアリア」という話を前回お伺いしました。
福田さんとプランを固め、企画書を学研に持ち込みました。日本を代表するギタリストの半生記と著名人との対談ということで、企画はスムーズに通り、早々に編集作業に取り掛かりました。
仕事を進める途中で、演奏風景のDVDを書籍に付けたらどうかという提案が福田さんからあり、私も同意しました。当初は、既に撮影済みの映像をいくつか集めてDVDに収録するという考えだったのですが、福田さんもわたしも、中途半端なことはやりたくないという気持ちで一致し、新たに撮影することになりました。
――「6弦上のアリア」に付いているDVDは、全て新たに撮り下ろされたものだったのでね。
そうなんです。じつは、ライナー・キュッヒルさんと福田さんの「デュオ・コンチェルタンテ」録音の際、映像作家の大墻敦さんがレコーディング過程のドキュメントを撮影していました。これはのちに1時間くらいの作品として結実し、すでに上映もされています。彼は、NHKでディレクターやプロデューサーを務めたのちに、大学で教鞭をとっていますが、その優れた映像センスに、福田さんもわたしも惚れ込んでいました。
そこで、「6弦上のアリア」の撮影もお願いし、バッハ、ソル、ヴィラ=ロボス、武満徹などの作品を異なるギターで演奏した映像を制作することができました。さらに大墻さんの発想で、教育者としての福田さんの実像に迫りたいということになり、マスタークラスの風景も収録することになりました。
――なるほど、ギタリストの福田さん、撮影監督の大墻さん、そしてプロデューサーの白柳さんということで、「ザ・ギターレッスン」を構成するキャストとスタッフが揃ったわけですね。
「6弦上のアリア」制作時の撮影が福田さんをはじめ、スタッフのわたしたちにも大きなインスピレーションを与えてくれたのは事実です。そもそも、福田さんご自身が、かねてから基礎からの教則をまとめたいとおっしゃっていたので、それを教則本として上梓する前に、映像化したらどうかということで、次第に「ザ・ギターレッスン」の企画がわたしたちの間で現実味を帯びてきました。
――なるほど、そして制作の起爆剤となったのが、映画「マチネの終わりに」だったのですね。この話は次回にお伺いしたいと思います。
(BRAVO Café 番組ディレクター)
J.S.バッハ:プレリュード~フーガとアレグロ BWV998(ガエターノ・ガダニーニII世・19世紀ギター)〜「6弦上のアリア」添付DVDより